一人社長や個人事業主が把握するべきマーケティングの業務概要
一人社長や個人事業主にはマーケティングの知識が欠かせません。
まず、マーケティング担当者を雇わない場合は自分自身がノウハウを持っている必要があります。
また、個人事業主がマーケターを雇用するとしても、雇用主本人がマーケティングのことを知らないと、適切な採用活動をすることができません。
さらにマーケティング担当者が突然離職すれば、それだけでも企業としてピンチを迎える可能性もあります(特にマーケターが少ない、もしくは一人しかいない中小企業は危ないです)。
ですから一人社長や個人事業主自身もマーケティングの業務内容について、最低限把握しておきましょう。
マーケティングとは?
「商品・サービスが安定して売れ続けて、利益が発生するシステムを構築すること」をマーケティングと言います。
簡単に表現するのであれば「会社として稼ぐための仕組みを作る仕事」です。
基本的に「商品・サービス作り」に携わることはなく、「商品・サービスを売ること」に専念します。
商品・サービスが優れていても、マーケティングの質が低ければ、望むレベルの利益が出ないかもしれません。
また、現実的に、企業は常に優れた商品・サービスばかりを生み出せるわけではありません。
ですが、そういった商品・サービスを、可能な限り利益に繋げるのもマーケターの仕事と言えます。
マーケティング担当者の主な業務内容
以下、マーケティング担当者(マーケター)の主な業務内容を挙げます。
- リサーチ(市場調査)
- 情報集め
- 収集したデータの分析
- 分析結果から「仮説」を作る
- 戦略を立てる、実行する
- 施策のブラッシュアップ
マーケティング担当者は、上記のように「計画を立て→実行して→実行した結果を評価して→ブラッシュアップ(改善)する」ことをひたすら繰り返します。
また、実力のあるマーケティング担当者ほど、このサイクルを回すスピードが速い傾向にあります。
ちなみにこのサイクルのことを、計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act)の、頭文字をそれぞれ取り、「PDCAサイクル」と言います。
ビジネスにおいて当たり前のように使われている言葉ですから覚えておきましょう。
さらにマーケティング担当者には、
- リサーチ力
- 分析力
- プレゼン力
- 企画立案力
なども欠かせません。
この中で特に重要なのは「企画立案力」です。この能力に長けている人ほど、商品・サービスを売るための施策を出して、それを具現化することができます。
一人社長や個人事業主にはマーケティング関係の資格は不要|ただし知識は必須
一人社長や個人事業主だからといってマーケティング関連の資格を取得する必要はありません。マーケティングは、「どこか(誰か)から正式に認められないと行えない」という性質のものではないからです。
就職・転職活動者の場合は資格の取得を検討してもいいかもしれませんが、個人事業主は「雇う側」ですから、資格はいらないはずです。
ただ、もちろんマーケティングに関する最低限のノウハウを持ち、業務も一通りこなせるようになっておかなければなりません。理由は冒頭でお伝えした通りです。
主なマーケティングのタイプ
コンテンツマーケティング
読み手にとって価値の高い情報を発信して、見込み客を増やし、いわゆる「育成」をして、商品・サービスの購入や成約に繋げるためのマーケティングです。
ウェブマーケティング
インターネット上で進めるマーケティングのことです。結局のところ、「ネット上でどのような情報を発信するか」を考える事になりますから、コンテンツマーケティングの一種と言えます。
ただ、コンテンツマーケティング自体には、例えば「パンフレットの配布」や「チラシ配布」など、インターネットが関わらないものも含まれます。
ソーシャルメディアマーケティング
ソーシャルメディアに投稿することによって行うマーケティングのことです。
ダイレクトに売上を狙うのではなく、「ファンを増やす」という発想で進めると成功しやすくなります。
これも広義ではウェブマーケティングの一種ですが、フィールドがソーシャルメディアに限定されていますから、きちんと呼び分けるべきでしょう。
口コミマーケティング
商品やサービス、自社そのものに関するプラスの内容の口コミを収集する手法です。
もちろん「口コミの捏造」や、「良い口コミをした人限定のリターンを用意する」などの事をするのは厳禁です。
ただ、「内容に関係なく、口コミをした全ての人にリターンを用意する」のは構いません。とにかく報酬などによって口コミの内容が歪まないようにする必要があります。
バズマーケティング
商品やサービス、自社そのものに関するプラスの口コミを加速させて、「バズる」状態を狙うマーケティングのことです。
ちなみにバズマーケティングに似た手法として、「バイラルマーケティング」というものもあります。両者の違いは以下の通りです。
バズマーケティング:戦略的に口コミを発生させてバズらせる
バイラルマーケティング:口コミの自然発生と伝達を促進する
言い換えると、「口コミを増やす」のがバズマーケティングであり、「口コミを広める」のがバイラルマーケティングという事になります。
インフルエンサーマーケティング
一定以上の影響力を持つ人と提携して行うマーケティングです。例えば、「認知度の高いインスタグラマーに自社商品を宣伝してもらう」などが該当します。すでに有名な人を利用しますから即効性があります。
ただ、もちろん有名なインフルエンサーであればあるほどコストが高くなる傾向にあります。
また、インフルエンサー選びも慎重に行いましょう。
極端な例ですが、メイク関連のインフルエンサーに筋トレ系の商品を紹介させても意味がありません。
On2Offマーケティング(O2Oマーケティング)
「On2Off」とは「online to offline」の略であり、インターネット上で情報発信を行うことで見込み客を増やし、その見込み客を実店舗に誘導する手法です。
例えば、「LINEアカウントを作成して、友だち追加をした人に対して実店舗で利用できるクーポンを配布する」などのやり方が該当します。
動画マーケティング
文字通り、動画によって自社のサービス・商品、もしくは自社そのものについて発信する手法のことです。動画というものの性質上、SNSやユーチューブとの親和性が高いと言えます。
(技術的な意味では)動画を作り込む必要はありませんし、それほどコストをかける意味もありません。
戦略やアイデアによって大きな成果を出すことができるからです。
ペルソナマーケティング
こちらは「架空のユーザー像」を作って、そのユーザーに向けて商品・サービスを作ったり、情報発信をしたりする手法のことです。
ペルソナマーケティングをすることで、より「刺さる」商品・サービスの開発、情報発信をしやすくなります。
また、ペルソナを作り込んでおくことで、「この人に対して売る」というビジョンがはっきりしますから、「各スタッフの戦略や発想が、徐々にずれていく」という事が起きにくくなります。
ちなみにペルソナと混同されやすい言葉として「ターゲット」があります。
両者の違いは以下の通りです。
ペルソナ:個人像。実在していなくてよい
ターゲット:実在の集団像
例えば、ターゲットであれば「30代男性、東京都在住、投資に興味がある」くらいしか想定しません。
しかし、ペルソナとなれば「34歳男性、東京都○○区在住(電車通勤)、配偶者と二人の子供がいる……」などと細かくなります。
マーケターの素質がある人とは?|採用の判断基準
続いてはマーケターに向いている人材が、おおよそ共通して持っている素質について解説します。
- 論理的思考能力が高い
- 数字やデータを扱う能力がある
- 情報収集力が高い
- アイデアをよく出す
- 行動力がある、行動が迅速
- プレゼン力がある
- 問題解決能力が高い
そしてこれらの能力を持つ人を探すためには、
・筆記テスト
・プレゼンテスト
・採用面接
をするのが有効です。
筆記テストによって、数学やデータを扱う能力、最低限の論理的思考能力を見極めることができます(それができるようなテストを作りましょう)。
プレゼンテストは以下のように進めることを推奨します。
- テーマを1つ決める
- 資料作りとプレゼンをさせる
- 期間は1週間程度
自社商品・サービスに関係するテーマにするといいでしょう。
例えば、ダイエットサプリメントを扱っているのであれば、「サプリメントを男性にも使ってもらうための方法を提案せよ」などのテーマが考えられます。
プレゼンをするには、
- テーマを理解する力
- 論理的思考力とアイデア力(によって適切な施策などを出す)
- 情報収集力
- 情報を使って、資料を作る力
- プレゼン力(情報を分かりやすく発信する力)
などが求められます。
つまりマーケターとしての総合的な能力が高くなければ、良質なプレゼンをすることはできないのです。
そして採用面接では、「迅速に行動できるのか」「これまで問題とどのように向き合ってきたのか」などを見極めましょう。
もちろんマーケティング関連の能力以外にも、例えば「人柄」「モチベーション」など譲れない部分があると思いますし、それも尊重して構いません。ただ、情熱だけではマーケティングの仕事はできないという事も覚えておきましょう。
まとめ
ここまでマーケティングの業務概要や、マーケティングのタイプなどを紹介しました。
「マーケターを雇っている個人事業主」であっても、マーケティングに関する最低限のノウハウは必要です。
また、時代が進むにつれて、新たなマーケティング手法が生まれることもあるかもしれませんから、常にアンテナを張っておきましょう。